死んでたまるか ゾンビストーリーズ(プレビュー)

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この作品は小説です。

2013年9月に出版した作品です。 

 

死んでたまるか(ゾンビストーリーズ)


【作品紹介】
——大和撫子、カミカゼ特攻だ!

ゾンビだらけの世界で、のんきに部屋でゴロゴロ暮らすヒロイン。一本の電話で、その平穏が破られる……。

ヒロインは果たして、家族を守り、最後まで生き延びることができるのか。

生き抜くための「強い意志」こそが彼女の武器。

地震、雷、火事、ゾンビ。何でも来い!!


   

 ああ、今日もゾンビがいるわ、いるわ。何回見ても気持ちが良くないな、と思いつつも、つと、観察する。

 本日、駐車場をたむろしているのは2名様。見た感じ、身体は腐っている。髪の毛が、かつらのようにズルリとズレていたり、目玉がくり貫かれてたり、指の骨が見えたり。風に乗って、かすかにヘンな臭いも漂ってくる。オヤジの臭いと一体どっちがましだろうってところ。

 この辺はカラスが多く、しかも凶暴なので、少なくない数のゾンビが目をつつかれたり、はらわたを食いつかれていた。気持ちは悪いけど、目の見えないゾンビなんて大した敵ではないから結構ありがたい。おかげさまで、最近は「買い出し」にも行けるようになった。もっとも、お金を払わないでスーパーで物をあさるだけなんだけど。

 こんな風になったのは、ひと月ほど前。停電になった後、悪い風邪でも引いたみたいに具合が悪くなって、しばらく横になると気づいたら眠っていた。目が覚めたら、死んだ人が生き返ってゾンビになっただの、停電のショックで集団心臓麻痺で死亡だの、テレビで大騒ぎして、結局みんな我も我もと海外やら田舎へ逃げ出してしまった。

 お金持ちはジェット機をチャーターして外国に逃げたって話だけど、外国の方が土葬なんだから余計ヤバイんじゃないのって思った。とは言っても心臓麻痺で死んだ連中がみんなゾンビ化したんだから、今のところ、日本にも死体がウヨウヨしている。

 ネットの話だと、噛まれても映画のようにゾンビになったりはしないみたい。停電以後に死んだ人もゾンビ化せず、普通に死んだままらしい。(普通に死んでるってヘンだけどさ)と、すると細菌感染ではなくて、あの停電の期間に死んだ人だけがゾンビになっているわけで。これ以降減っても増えはしないから、そのうち何とかなるかもしれない。

 それでも、ゾンビに襲われた場合、噛み付かれたり、締め殺される(実際はこれが一番多い。とにかく力がものすごく強い)場合があるので、迂闊に外は歩けない。日本には当然、鉄砲はないから海外映画のように民間人が高所からゾンビの頭を狙い打ち、なんて芸当はできない。

 そこで、考え出されたのが足の捕縛と目潰しスプレーで、紐の両側に重りをつけて投げて足を引っ掛けたり、ワナをこしらえたり、直接結んだり。スプレーで目潰しすれば、目標を見失ったゾンビから逃げるのはたやすい。動きが鈍いので、数さえ多くなければそれほど難しい対処方法でもない。ホントは延髄を切断するとピタッっと動かなくなるそうだけど、戦争を知らない世代にはちょっとムリでしょってことで、大抵足の引っ掛けでみなさん、しのいでいるらしい。

 足を縛っても手でズルズル歩いてくるのもいて、顔の皮がむけまくっている……オエーッ。でも、走るタイプのゾンビじゃなくってホント良かった。走って噛みつく元気なタイプだったら、絶対犠牲者は今の10倍でしょ。

 自宅は分譲マンションの1DKで、築25年くらい、ちなみに賃貸。古いけど、赤レンガの瀟洒な外観に惹かれて借りた。13階建ての6階部分だけど、重厚な造りなので今回は助かった。

 たまーにエレベーターに乗ってやってくる奴がいるけど、それ以外は外部からの侵入は難しいし、何しろスーパーがすぐ隣だから買い出しがすごくラク。ここにしといて良かったなあとしみじみ思う。

 隣のおばさんは停電のすぐ後、激しく逃げ回る音と「助けて~、ぎゃー」という断末魔の悲鳴がして、パッタリ静かになった。年を取った母親と二人暮しと聞いていたから、多分ゾンビ化した母親に食われたんだろうな。

 もっとも以前、裁判沙汰寸前まで大喧嘩したおばさんなので、全然同情の余地なし。毎日朝方まで大音量でテレビをかけるので、注意したら開き直って「アンタなんか賃貸でしょ!」と逆切れして、たまたまマンションの理事のメンバーだったおばはんはその権限で私を追い出そうとしやがった。二重に許しがたいヤツ。だから、イケないと思いつつも、ちょっといい気味。

 部屋のドアを空けて廊下に出ると、廊下の窓から市内で何番目かで高いんじゃないかなと思うくらい、どこから眺めてもすぐ見つかる高層高級マンションが建っている。私の両親はそこの住み込みの管理人をやっていて、ホントの住居は一番下の1階なんだけど、現在は最上階のスイートルームに移住している。「ゾンビ様様?」ってとこ。

 高級マンションって言っても実際のところ、アヤシイ人ばかり住んでいて、暴力団系の人が税金隠しかなんかで購入してたり、日本人が借りているはずなのに、なぜか外国人が入れ替わり立ち替わり引っ越しを繰り返したり、息子が麻薬でつかまっちゃった人が暮らしていたり、70過ぎのいじわるそうなばあさんが4LDKの部屋を1人で暮らすのに2軒購入したいとか、裏にいくらでもなんかありそうな人ばかり住んでいた。(実際警官が親のところに聞き込みに来たりした)

 やっぱり、立派なところに住むには悪いことしないとダメなんだねえ、なんて1DKの狭くて陽のあたらない部屋で家族で笑ってたけど。こんな事態になりましたら、蜘蛛の子散らしたように、一目散に高級車で逃げていったそうな。やれやれ。 

 トルルル、と電話が鳴る。もしもし、と出ると母だった。

 大丈夫? そっちは何もない? と今までにありえないくらい優しく尋ねてくる。普段は本当に私を産んだ人なんだろうかと思うくらいかわいがりゃしないのに、風邪を引いたとか、ケガをしたとか、身体的危機に私が見舞われた時にだけ、異常に優しくなるのだ。そのくせ、精神的に参っているときはいささかの同情も見せず、追い討ちをかけるように罵ったりする。母親だけど未だに不思議な人だ。

 

お試し版はここまでです。


  

死んでたまるか(ゾンビストーリーズ)

 

のお試し版でした。


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