おにぎりがたべたい 待ち時間に軽く読む短篇集・1(プレビュー)

Amazonサンプル版と同じ10%を掲載しています。

 

3編収録。

2013年3月に出版した作品です。 

おにぎりがたべたい(待ち時間に軽く読む短篇集・1)


【目次】 

○盗まれた仏像

仏師を騙る、盗人の仁斎。仏像を盗んで売った金で遊郭に行き、太夫に手ひどく振られて復讐を誓う。だが、観音像を盗み出してから、仁斎の身に、次々と奇怪なできごとが……。

○おにぎりがたべたい

ああー、お腹空いたぁ。財布の中には23円、炊きたてごはんで握ったおにぎりのためなら、悪魔に魂を売ってもいい―――。

○揺籃

真っ白な病室。揺れる、ゆりかご。「ぼく」が見たものとは。

○あとがき

 


 

盗まれた仏像

 

 むかし、むかしあるところに、仁斎という盗人がいた。この盗人、人前では仏師を名乗り、日中はすました顔でノミを構えては木片を彫るフリなどをしていた。そして、あちこちの寺から盗み出した仏像を、自作のものとして高値で売りつけていた。

 仏像を見る目だけは、たいした目利きだったので、盗んだ仏像はどれも威厳のある、優雅な姿のものばかり。「なんと素晴らしい腕を持つ仏師様じゃ」と、仁斎の正体を知らぬ村人からは尊敬を受けるほどであった。

 

 そんなある日のこと、三日前に大陸の商人に盗んだ仏像を売り渡し、懐が暖まって上機嫌の仁斎は、都に行って馴染みの遊郭に入った。早速、遊女を口説きながら豪遊していたが、気位が高いと評判の松尾太夫にふられ、鬼も寄り付きたくないほどにむすくれた顔をしていた。

 仏師とは、表面だけのこと。仁斎は無教養で粗野な振る舞いをする田舎者なれば、遊女とは言え歌舞音曲に優れた教養深い太夫には好かれようもない。

 

 遊女をはべらせてしたたか酔った仁斎は、見世に並ぶ遊女では物足りぬ、この店で一番いい女を手に入れてやろう、と考えた。一番の女と言えば、松尾太夫だ。よし、太夫を身請けして、わしのものにしよう。

 引き止める遊女を振り払い、仁斎は懐に入れた金をチラつかせながらズカズカと店の奥に入り込み、松尾太夫の部屋の前で大声で呼ばわる。

 

「太夫、お前を身請けしてやろう。明日にもお前は自由の身になり、わしと暮らすんじゃ。お前のためにどこのお大尽にも負けぬ屋敷も建ててやろう。どうじゃ、太夫よ。よいな、よいな?」

 

 すると、襖の向こうから、玲瓏とした太夫の声がこう答えた。

 

「ぬしさんがどこの大旦那か存じませぬが、わっちは嫌でありんす。わっちは、故郷の寺の観音様に、年季が明ければまた元気なおっかさんとおっとさんと会わせてくりゃれ、と願った身でありんす。身請けなぞ、望むはずもありんせん。帰りなんし」

 

 太夫は寺の観音に願をかけた、などと言っているが、それは断る口実。けんもほろろにふられた仁斎は、腹の虫が収まらぬ。せっかく苦界から救ってやろう、自分の女房として大事にしてやろうとしたのに、遊女の分際で手ひどく断りやがった。可愛さ余って憎さ百倍、なんとか目にもの見せてやろう、と仁斎は誓う。

 

お試し版はここまでです。


 

 

おにぎりがたべたい(待ち時間に軽く読む短篇集・1)

 

のお試し版でした。

 

 

 
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